発達障害の子ども ドラム 効果

療育

HSC・発達障害の子どもにドラムが効果的な理由|体幹・不安・自信が変わった5年間【ホームスクール体験】

はじめに|「何かできることは…」という親の願いから

HSC(Highly Sensitive Child)であり、発達障害(ASD・DCD)を併せ持つ息子が、ホームスクールの中で5年間続けてきた「ドラム」。発達障害のある子どもにとって、ドラムはどのような効果があるのでしょうか。
その習慣は、体幹の安定・姿勢の改善・不安の軽減・集中力の向上など、想像以上の変化をもたらしました。

この記事では、実体験とともに、ドラムが発達特性のある子どもにどのような効果をもたらすのかを、科学的な視点も交えてお伝えします。


マコトの特性と「体と心のつながり」

マコトは低緊張で、赤ちゃんのころからふにゃふにゃとした体つきでした。平衡感覚・バランス感覚(前庭感覚)がうまく働かず、姿勢が崩れやすく、扁平足による不安定さも重なって、心身ともに「地に足がついていない」感覚が長く続いていました。

身体的な不安定さは、心理的な不安感と深く結びついています。

身体反応に対する不適切な信念によって、過剰な緊張感が生起し、それが行動的なパフォーマンスに影響を及ぼしている可能性が考えられる。 ―政本香(2003)

また、スポーツの緊張場面における研究(法政大学・髙野美穂ほか)では、心理状態の変化や心理特性の違いが身体のバランスと関連していることも確認されています。不安や緊張が身体のバランスを乱し、その揺らぎがさらに不安感を強化するという悪循環。特に幼少期には、この連鎖が外部環境への恐れを大きくする要因になりやすいと言われています。

食事の仕方、道具の使い方、体の洗い方……一般的には「見て自然に覚える」ような動作も、マコトには難しく、二人羽織のように手を添えながら体が覚えるまで繰り返す日々でした。心が不安定なのは、体の不安定さと切り離せないという実感を、毎日のように痛感していました。



10歳でドラムと出会うまで


マコトが10歳のとき、通所していた放課後デイサービスで、電子ドラムのセッションが始まりました。その施設は感覚へのアプローチを重視しており、様々なセッションを提供していたのですが、新たにドラムの希望者を募るとのこと。

「手足をバラバラに動かすドラムなんて、マコトには到底無理だろう」

正直、そう思いました。でも、本人がやってみたいと言う。その前向きさが嬉しくて、「自分で叩いたら音が鳴る、その体感ができればいい」という気持ちでセッションを申し込みました。

幼いころからビートルズのベストアルバムが大好きだったマコトにとって、ドラムの音には馴染みがあったのかもしれません。


電子ドラムを自宅に導入するまで

セッションが始まって間もなく、次のレッスンのために電話帳を一生懸命叩いて練習する息子の姿を見て、私の気持ちは決まりました。
狭い自宅ですが、電子ドラムを購入。ホームスクールのマコトにとって、YouTubeはあらゆる学びの入口でしたが、ドラムに関しても様々なドラマーの演奏動画が先生になりました。

そしてセッション開始から数ヶ月後、初めて8ビートをスムーズに演奏できたその日——マコトは、それまで見たことのないほどの達成感と喜びに包まれていました。

その顔が、今でも忘れられません。


毎朝のルーティンとして5年間続けた結果

ホームスクールの小学校5年間、ドラム演奏は毎朝のルーティンになりました(高校1年生現在も継続中)。
1日1〜2曲だけ。それだけです。でも、習慣化の力は想像以上でした。

3ヶ月で姿勢が激変した

特に驚いたのは、声かけなど何もしていないのに、わずか3ヶ月ほどで姿勢が見違えるほど改善されたことです。
ドラムは四肢を使うため、体の軸がブレていると上手く叩けません。また、不必要に力が入っていると良い音が出ないため、先生から「力を抜いて」という指導を受けるうちに、自然と背筋が伸びていったのです。

縄跳びが突然できるようになった

一定のリズムをキープする練習を重ねるうちに、全身の動きがスムーズになり、どうしても跳べなかった縄跳びが突然できるようになりました。これは本当に驚きでした。

心のもやもやが晴れるようになった

「叩いた後、気持ちいい」——ドラムを始めた当初から、マコトはそう言っていました。その場の気持ちを音に乗せて表現できる。HSCの子にとって、言葉にしにくい感情を「音で放出できる場所」は、特別な意味を持つのかもしれません。

▼HSCについて詳しく知りたい方はこちらの記事でまとめています


ドラムが発達障害の子どもに与える効果:科学的根拠

「効果があった気がする」という体感だけでなく、ドラム演奏の効果は研究によっても裏付けられています。

発達障害の子どもへの効果(英国・大学共同研究)

英国のチェスター大学とハートプリー大学の共同研究では、発達障害の子どもたちが週2回・各30分のドラム演奏を10週間行った結果、以下の改善が確認されました。

  • 器用さ・リズム・タイミングの向上:運動能力やリズム感が改善
  • 集中力の向上:学校外での宿題への集中など、注意力が改善
  • 社会的交流の改善:友人・教師とのコミュニケーションが向上

「ドラミングには、身体活動・協調性・音楽性のユニークな融合があり、これらすべてが健康に有益であることが知られています。子どもたちがこのチャレンジに挑戦し、成長するのを見るのは素晴らしいことです。」 ―Dr Steve Draper(チチェスター大学)/ Science Daily

ASD(自閉症スペクトラム)への効果

英国の別の研究では、ASDの青少年が8週間のドラムレッスンを受けた結果、以下の効果が報告されています。

  • 多動性・不注意の軽減
  • 感情コントロールの向上:自己制御能力が高まり、行動が安定
  • 脳の機能的結合の強化:抑制制御と行動結果監視を司る脳領域への影響

「我々の研究は、ドラミングが自閉症の青少年の多動と不注意を減らすだけでなく、抑制制御と行動結果監視を司る脳領域の機能的結合を強化するという強力な証拠を提供する。」 ―Drumming should be taught in schools to help children deal with dyslexia and autism(研究論文より)


▼HSCとASDの違いについて詳しく知りたい方はこちら

認知機能への影響(脳科学の視点)

脳科学者の宮﨑敦子氏の研究では、ドラム演奏が空間認知能力やIQに関連する脳の領域を活性化させる可能性が示されています。

  • ドラム演奏者は空間認知課題で高い成績を示す傾向がある
  • ドラム演奏により脳内の白質が増加し、認知機能の向上に寄与する可能性がある



このように、発達障害のある子どもにとってドラムは多くの効果が期待できます。


そして、ステージへ

自宅での電子ドラム練習を5年間続けた数ヶ月前、マコトはドラムの先生のバンドに誘っていただき、ジャズ喫茶のステージでボサノヴァを演奏する機会をいただきました。

初めてお客様の前で演奏した日。あの表情は、一生忘れません。手拍子を合わせることも難しかった子が、ステージの上でリズムを刻んでいる。5年間、毎朝続けてきた1〜2曲が、確かにここへ繋がっていました。

四肢をバラバラに動かせるようになった今の姿を見ると、あの電子ドラムは本当に安い買い物でした。発達障害の子どもにとって、ドラムは身体面と心の両方に働きかける貴重な習慣だと感じています。


おわりに

本格的なレッスンの前は、手拍子を合わせることも難しかったマコト。「ドラムは難しそう」という先入観がありました。でも、安心できる環境で挑戦できたことが、すべての始まりでした。

ドラムを通じて得られた、不安感の軽減・体幹の強化・タイミングの習得による達成感と自信は、マコトの成長に欠かせないものになりました。

「タイミングを掴む」スキルは、日常生活のあらゆる場面で必要とされるもの。不器用さからくる日常の不便が、気づけば少しずつ減っていきました。

療育機関や教育現場でも、子どもたちがドラムに触れる機会が増えることを願っています。

「叩けば音が鳴る」 ——このシンプルな体験が、どれほど大きな変化をもたらすか。その可能性を信じて、一人でも多くの子どもたちに音楽が届きますように。


自宅で始めるなら|息子がホームスクールに使った電子ドラムセットについて

電子ドラムの最大のメリットは騒音を大幅に抑えられること。マンションや住宅密集地でも、ヘッドフォンをつければ深夜以外はほぼ問題なく練習できます。

マコトも使用しているのは Alesis(アレシス) の電子ドラムセットについて紹介します。


電子ドラムを選んだポイント

① バスドラムペダルが付いていること
DCDや不器用さがある子こそ、最初からバスドラムペダル付きのフルセットをおすすめします。足を含む四肢すべてを使うことで、体幹・協調運動・リズム感への効果が最大になるからです。

「足を動かすのは難しそう」と心配されるかもしれませんが、マコトのようにDCDがある子でも、毎日続けることで意外と早く8ビートができるようになりました。最初から本物のキックペダルで始めた方が、達成感も大きいと思います。

② メッシュヘッド素材
ゴムヘッドより打音が静かで、長時間の練習でも疲れにくいです。毎朝のルーティンにするなら、静音性は重要なポイントです。


Alesis Nitro Mesh Kit / 実際に使っているモデル

※現在も5年以上、毎朝使い続けています。

  • 全パッドがメッシュヘッドで静音性が高い
  • キックペダル・スローン(椅子)・スティック付属のフルセット
  • 385種類のサウンド・60種類の組み込み曲で飽きずに続けられる
  • Bluetoothなし・シンプルな操作が初心者に向いている

Alesis Nitro Max Kit / 上位機種

  • Nitroの上位版。Bluetooth対応でスマホアプリと連携可能
  • 音源440種以上・折りたたみ式ラックで収納もコンパクト
  • 成長に合わせてより高度な練習をしたい場合にも対応

Alesis Turbo Max / コンパクトなオールインタイプ(バスドラム別)

  • ビギナー向けに設計された、コンパクトかつBluetoothに対応
  • 静音性の高い7ピース電子ドラムキット
  • 100のオンラインレッスンで素早くスキルを習得 

我が家の使い方メモ 自宅では毎朝電子ドラムで1〜2曲。月に1度ほどスタジオで生ドラムも叩いています。音の響きや振動を全身で感じられる生ドラムの体験は格別で、それを楽しみに毎日の練習を続けているようです。自宅での積み重ねがスタジオで活きる——このサイクルが、マコトには合っていたようです。

Their depth is not a flawWhy Highly Sensitive Children Think So Deeply | Gentle Parenting Insight前のページ

関連記事

  1. 敏感っこの成長記録

    HSCとは?敏感な子どもの特徴と子育てで大切にしたいこと

    「この子は、どうしてこんなに敏感なんだろう.. 」音…

  2. 雨で濡れた窓

    HSC

    敏感っことお天気【気象病・天気痛を付き合う】

    気象病・天気痛とは?微熱や動悸など自律神経失調症に悩まされて…

  3. Their depth is not a flaw
  4. TOKYO

    発達特性(ASDなど)

    療育手帳のメリット・デメリット|発達グレーゾーンの体験

    発達障害が目立たないグレーゾーンだからこそ役に立つ【療育手帳のメリッ…

  5. ホームスクーリング

    不安に役立つ習いごと【HSC・ASD】

    不安を解消?ロジカルシンキングの効果この数年、プログ…

最近の記事
  1. 発達障害の子ども ドラム 効果
  2. Their depth is not a flaw
  3. little girl
  1. HSC

    内向的な子どもが必要とするもの【自己成長と自信】
  2. HSP(親の視点)

    ありのままの自分でいいと思える環境を
  3. ホームスクーリング

    『あつまれどうぶつの森』から学ぶ〜箱庭療法〜
  4. 家のリビングで寛ぐ犬

    ホームスクーリング

    マコトのホームスクール【安心基地からの再出発】
  5. ホームスクーリング

    集団主義で失うモノ〜『えんとつ町のプペル』から学ぶこと〜
PAGE TOP