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ホームスクールの可能性 〜不登校はスタート地点〜
個性を持った子たちが、画一的・均質的な学校教育に適応しづらいことは、ごく自然なことです。
心理的に敏感なHSCの場合は特に、本来の自分を押し殺してしまうことも珍しくないのかもしれません。また、集団生活の中で、自分とかけ離れた人物像を求められていることへの気付きも早く、どうしても自己肯定感を育みにくい環境と言えるのかもしれません。
息子マコトの付き添い登校は、極端な疲労と不安が見られた小学校入学直後から。担任の先生からの提案でした。結果、私(母)が1年弱付き添う中で見た学校の支援体制の現状から、我が家のホームスクールを決断することに繋がりました。
自分の意思だけでは環境を選べない子どもは、どうしても親(養育者)の気付きや判断に大きく影響されます。そして増え続ける不登校の問題は、いまや思春期の子だけが抱える問題ではなくなってきたようです。親の立場では、情緒が著しく発達する幼少期ほど皆と同じ枠に収まることを期待してしまうのかもしれません。けれども、気質・特性が環境に合わない状態で過ごすことは、大人にとってもしんどいことです。
人格が形成される人生でも大切な幼児〜学童期。もし、決められたカリキュラムに沿って拘束される時間の中でモチベーションを見つけられられずに、ただ耐えるだけの時間を過ごしていたとしたら..私はそんなマコトの様子を廊下から目の当たりにしていました。
HSCのSOS〜付添い登校から見えたモノ〜
校内で付き添う中で感じたのは、私の子ども時代と大きく変わっていない全体的管理システムへの違和感です。
日本に限らず、発達障害は急増していると言われる中で、標準的な発達ではない子に対する理解や支援が追いつくことには、根本的に無理がある体制なのです。先生方の負担はとても大きくて、時間的・精神的にも全く余裕がなさそうな現状.. このような学校のシステムを大きく変えることもないまま、児童一人ひとりの特性に合った(※1)合理的な配慮が義務化されたことは、体裁ばかりを取り繕うようにも感じてしまいます。
また授業は受身的で個性を伸ばすことが難しく、多様性を認めにくいこのような教育環境は、時代を考えれば相応しいとは言い難い光景。
来年からの教育改革も同様に、根本的な学校システムを何も変えずに、既存の人員で新しい取り組み・カリキュラムに対処していくのであれば、期待通りの効果は得られないように思えてなりません。
子どもたちへの影響を考えれば、多様な個性に対応することを前提に考えた教育改革は急がれます。根本的な国の制度の問題、校内で過ごしたことで改めて実感しています。
これは、息子が在籍する特別支援学級も大きな課題です。彼らは自分の困り感を的確に言語化することはできません、先生に『気付き』がなければ、困ったまま、しんどいまま、過ごすしかないのです。
問題行動と捉えられる方法でしかSOSを出せない子たちも一定数います。先生方がその子たちの心の声が聞こえるようになるには、心も時間もとても余裕がないのが現状ではないでしょうか。現在の特別支援教育については、別記事で自分なりに考えていきたいと思います。
また、多様性を叫ばれ始めたという時代背景からも、現在では登校を前提とした『不登校』というワードを使うことも受け入れにくいことです。不登校は解決するというより、就学前により多様な選択肢が当たり前に選べることが大切なのだと感じます。
[不登校支援を目的とした(※2)教育機会確保法(2017年2月施行)では、学校以外の学びの重要性が明記されましたが、義務教育として認められるまでには至りませんでした。]
HSCだった私自身、『自分らしさを感じられない』学校環境で周囲からの期待や要求に応え続けることは、やはり相当なストレスでした。過剰適応が続く期間が長くなればなるほど、当然その後の歩みへの影響も心配です。
私の子ども時代には学校以外に学びの場にほとんど選択肢はなかったような気がしますが、現在ではどうでしょうか。
(※1)合理的配慮とは
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成28年4月1日)では、日常生活・社会生活に制限を受けている人から、バリアを取り除く対応が必要だと伝えられた時に対応することを求めています。
参考 : 障害者差別リーフレット(合理的配慮を知っていますか?/内閣府)
(※2)教育機会確保法とは
参考 : 義務教育の段階における普通教育に相当する 教育の機会の確保等に関する法律施行後の取組
平成30年12月17日 不登校に関する調査研究協力者会議・ フリースクール等に関する検討会議 合同会議資料
ホームスクールでありのままを認める〜敏感っこの学び〜
技術革新の視点からすれば、既に学びは個々に適した環境を選べる段階へと徐々に移行し始めています。ホームスクールも大きな選択肢のひとつ。
来年(2020年)、日本でも5G(第5世代移動通信システム)が導入されることによって、超高速通信が実現すれば、現在の動画学習やオンラインスクールなどデジタル化したサービスの流通は、更に加速し、多様になっていくことは間違いなさそうです。集団がしんどいという敏感っこ達にとっては、大きな助けであり、学びの可能性が広がることは言うまでもありません。
遠隔で授業を受けることについて、ツイートしました。リプやDMで参考になる貴重な情報をいただいて大変ありがたかったです。近々、学校が遠隔授業の実現を含めて、今後の合理的配慮について話し合いの場を設けてくださいました。どのような形になるかわからないけれど、過敏っこのマコトにも無理のない形で皆と交流することができたら本当に嬉しいことです。
このようなスタイルでの学習も、5Gによって実現しやすく取り入れやすくなるのでは..と期待しています。
ホームスクール だから伸びる個性 【HSCの敏感さを味方に】
5年・10年.. と、これよりも短いスパンで大きく変わる世の中です。従来の常識に縛られず、先を見据えて考えていかなければならないということは、私たちの親世代の子育てとは、まるで違う判断が求められていくということ.. 親の役割も変化していくのかもしれません。常識に縛られない柔軟な判断が、より必要になってくるのではないでしょうか。
これからのAI時代、”皆と同じことが安心”ではなくなっていくとすれば、一人ひとりの個性がより重視され、その価値もより評価されていくように期待しています。
このような時代の中でHSCや発達障害児自身が、自分が適応しにくい環境に無理に慣らしていくことがいいとは決して思えません。安心できない場所で能力を発揮できないのは当たり前のことで、それでは十分に自己肯定感を高めて、希望を持って将来の自立に繋げていくことが難しいから。
人との違いを認めた上で、その自分を受け入れ、安心して自分らしさ(能力)を発揮できる環境に身を置くことができたなら、進むべき道は自ずと見えてくるのだと思います。そのために、家庭以外に依存できる場所を見つけること(安心なコミニティに属すること)は、自立を助けてくれるはずです。
ただ、どうしても環境を選べずに無理を強いられる場面もあるかもしれません。自分の気質・特性を深く理解することで、やむを得ない状況に対して、どう対処していくか、その対処法をなるべく早期に身につけておくことも自分を守る上で大切だと感じます。
現在小3のマコト。いまはまだ多くの情報から私が取捨選択していく責任を感じながら、直感を磨いて決断していかなければなりません.. 本人の小さなサインを見逃さず、一つひとつ丁寧に考えていきたい思いをココへ記しておこうと思いました。
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現状では、ホームスクールやフリースクールには公的な支援がない(2019年現在) ことは大きな課題です。学びの場を公立小学校に選ばない場合、ある程度の経済的負担は避けられません。 各家庭の事情によって、子どもの可能性が変わるとすれば残念なことです。みんな、平等に教育を受ける権利を持っています。